VanEck、ビットコイン保有企業に資本配分リスクを警告

ビットコイン(BTC)を財務資産として保有する上場企業に対し、資本効率をめぐる懸念が強まっている。
大手資産運用会社VanEckは16日、これら企業の株価が純資産価値(NAV)に近づいている現状に警鐘を鳴らし、安易な新株発行による資本の希薄化リスクに対する具体的な防衛策を提示した。
VanEckのデジタル資産リサーチ責任者マシュー・シーゲル氏によると、株価がNAVとほぼ同水準で推移する局面では、新たな株式発行によってビットコインを追加取得する従来の戦略が逆効果となりかねない。
これは、株価がNAVを下回る状況で発行された株が、既存株主の価値を損なう「希薄化」につながるためだ。
特に、リアルタイムで市場価格に応じた資金調達を行う「ATMプログラム」を活用する企業では、株価プレミアムが消失した場合、資本効率が急速に悪化するリスクがあると指摘された。
希薄化を回避するための防衛策
シーゲル氏は、NAVの0.95倍を株価が10営業日連続で下回った場合、ATMによる新株発行を一時停止するルールの導入を提案。
加えて、株価が割安に放置される場合には、自社株買いによる株主価値の回復を図るべきだと述べている。
さらなる選択肢として、NAVに対するディスカウントが長期化する場合には、事業構造の見直し、例えばスピンオフ、他社との合併、あるいはビットコイン保有方針そのものの撤回も検討すべきとの見解を示した。
経営陣の報酬制度についても、ビットコイン保有量に連動する仕組みから、1株当たりNAVの成長率に連動する設計への転換が推奨された。
これは、短期的な価格変動による報酬の偏りを防ぎ、中長期的な資本効率を高める狙いがある。
仮想通貨戦略の再構築が焦点に
今回の提言は、暗号資産(仮想通貨)を財務資産として組み込む企業が増える中で、単なる保有から「いかに保有するか」が問われる新たな局面に入ったことを示唆している。
資本配分、希薄化回避、ガバナンス強化といった課題への対応が、今後の市場評価に大きく影響しそうだ。