米上院、GENIUS法案否決|ステーブルコイン規制の行方と課題

米上院は8日、海外発行体を含むステーブルコイン規制強化を目指したGENIUS法案の採決で否決に至った。
同法案は3月に上院銀行委員会で可決されるなど期待されていたが、最終的に必要な60票には届かなかった。
海外ステーブルコイン発行体も規制対象に
GENIUS法案は、米国内だけでなく、テザー(USDT)などの海外発行体にもマネーロンダリング対策(AML)や銀行秘密法(BSA)の遵守を義務付ける内容を含んでいた。
これにより米国ユーザー向けサービスを提供する海外事業者にも米国規制が及ぶ仕組みを構築しようとしていた。
さらに「暗号資産(仮想通貨)サービス提供者」の定義も拡大され、従来の取引所やカストディアン(保管業者)に加え、開発者やバリデーター、自己管理型ウォレット提供者までが新たな規制対象となる予定だった。
規制強化の背景
背景にあるのは、イランや北朝鮮、ロシアなど制裁対象国によるステーブルコイン悪用への懸念である。
近年の報告では、ロシアの制裁対象取引所に約2,900億円(20億ドル)を超える新しい仮想通貨が流入した例も指摘され、監督強化への圧力が高まっていた。
2025年5月時点でステーブルコイン市場規模は約2,000億ドルに拡大し、国際送金などの分野で存在感を増している。最大手のUSDTは約1,430億ドル(約21兆円)の準備金を保有し、その多くが米国債で運用されている。
法案否決の理由と今後
法案否決の背景には、複数の要因がある。一部民主党議員は5月3日に共同声明を発表し、マネーロンダリング対策や海外発行体の扱いについて「より強力な規定が必要」として支持撤回を示唆していた。
また、トランプ大統領の親族が関与する「USD1」ステーブルコインの存在も政治的対立を複雑化させた一因とされる。さらに銀行業界からは「ステーブルコイン発行体が銀行預金の代替となりうる」との懸念も示されていた。
否決後、財務長官スコット・ベセント氏は「ステーブルコインやデジタル資産が世界で発展するには、米国のリーダーシップが必要だ」と述べ、法案否決を強く批判した。
今後、米国のステーブルコイン規制の行方は不透明だが、欧州連合が既にMiCA規制を進める中、米国の国際競争力への影響も懸念される。規制強化と革新促進のバランスをどう図るか、議論が続くものと見られる。
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