イギリス、仮想通貨の財産法を改定|法的地位を明確化

英国議会は11日、暗号資産(仮想通貨)や非代替性トークン(NFT)などのデジタル資産を個人財産として認める「財産(デジタル資産等)法案」を導入した。
この法案により、仮想通貨保有者の法的保護が強化され、英国の仮想通貨規制における先駆的な立場が固められる見通しだ。
法案の主な内容
新法案では、英国の財産法に「第三のカテゴリー」を設け、仮想通貨やNFTなどのデジタル資産を個人財産として明確に位置づける。
これまでデジタル資産は法的グレーゾーンに置かれていたが、この法案により所有者の権利が明確化された。
具体的には以下の効果が期待される。
- 詐欺やスキャムからの投資家保護の強化
- デジタル資産に関する紛争解決の円滑化
- 離婚訴訟などでのデジタル資産の扱いの明確化
ハイディ・アレクサンダー法務大臣は以下のようにコメントした。
「法律が進化するテクノロジーに追いつくことが不可欠であり、この法案によって業界がクリプト資産分野でのグローバルリーダーとしての地位を維持し、複雑な財産案件に明確さをもたらすことができる」
英国の仮想通貨規制の動向
英国政府は仮想通貨規制において先進的な立場を取ろうとしているが、一方で厳格な審査基準も設けている。
金融行動監視機構(FCA)の報告によると、仮想通貨企業のライセンス申請の87%が却下されており、厳しい要件が多くの仮想通貨取引所や業界プレイヤーを萎縮させているという指摘もある。
関連: 厳格化するイギリスの仮想通貨規制|FCAの認可取得に企業苦戦
今年初めには、マネーロンダリング規制にステーブルコインも含めるなど、「同じリスクには同じ規制結果」の原則に基づいた法整備を進めている。
日本の仮想通貨規制の現状
日本では2017年に資金決済に関する法律(資金決済法)が改正され、仮想通貨に関する法的枠組みが整備された。
この法律の特徴は以下の通りだ。
- 仮想通貨の法的定義の明確化
- 仮想通貨交換業者の登録制度の導入
- 顧客資産と自社資産の分別管理義務
日本の法制度では、仮想通貨は支払手段の一つとして定義されているが、法定通貨ではない。税法上は資産として扱われ、売買による利益は「雑所得」として最大55%の税率が適用される可能性がある。
英国の新法案と比較すると、日本ではすでに仮想通貨の法的定義や交換業者の規制が整備されている一方、デジタル資産を明確に「個人財産」として位置づける点では英国の新法案がより踏み込んだ内容となっている。
グローバルな規制動向
世界的に見ても、仮想通貨規制の整備は進んでいる。アトランティック・カウンシルの調査によると、分析対象60カ国のうち約66%が明確な税制や免許制度、マネーロンダリング対策要件を設けているという。
しかし、消費者保護施策を導入しているのは33%にとどまっている。
一方で、規制の厳しさと採用率には弱い相関関係しかないとされ、全面禁止の国でも利用者は増加傾向にある。
今後の展望
英国の新法案は、仮想通貨やNFTなどデジタル資産の法的地位を明確化し、所有権や保護、課税の枠組みを提供するものだ。
この法整備により、投資家にとってより好ましい環境が整い、仮想通貨の採用が加速する可能性がある。