コインベースがCDP Wallets発表|開発者用ウォレットインフラ

米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベースは28日、開発者向けの新しい仮想通貨ウォレットインフラ「CDP Wallets」を発表した。
このサービスにより、開発者は秘密鍵管理やインフラ展開を行うことなく、API経由でプログラム可能な自己管理ウォレットを完全に制御できるようになる。
従来の課題を解決する画期的アプローチ
Today we’re launching CDP Wallets V2—a major update to CDP’s backend developer-controlled wallet.
— Coinbase Developer Platform🛡️ (@CoinbaseDev) May 28, 2025
This release gives developers full control over wallet behavior, while offloading private key security to Coinbase’s Trusted Execution Environment. This offers a blend of… pic.twitter.com/U9O5iNrEiG
これまで開発者は、セキュリティリスクと開発の複雑さという二つの選択肢に直面していた。
秘密鍵を手動で管理する場合はセキュリティと運用負担のリスクがあり、カストディアルソリューション(資産預かりサービス)に依存する場合は柔軟性が制限される問題があった。
CDP WalletsはAWS Nitro Enclave内の信頼実行環境(TEE)インフラを採用し、秘密鍵を暗号化された状態で保持し、コインベースでさえアクセスできないようにしている。
APIを使って瞬時に仮想通貨ウォレットを作成したり、取引の承認(署名)を素早く行える機能を備えている。
また、使用する金額の上限設定や、特定の資産だけを取引できるようにする(資産ホワイトリスト)といったルールをプログラムで設定でき、取引を自動化することが可能だ。
さらに、EIP-712(スマートコントラクトとの間で情報をやり取りするための標準形式)に対応したメッセージ署名機能や、ブロックチェーン基盤であるEVM(イーサリアム仮想マシン)やソラナ(SOL)も完全にサポートしている。
幅広い開発環境への対応と活用事例
CDP Walletsはethers.js、wagmi、viemといった既存の開発者向けツールとの連携を可能にし、TypeScript、Go、Pythonといったプログラミング言語にも対応しており、開発作業の流れにスムーズに組み込むことができる。
活用例としては、自動化された分散型金融(DeFi)ボット、企業資産管理、AI(人工知能)がブロックチェーン上で活動するオンチェーンエージェントなどがある。
アメリカの開発者向けには、ウォレットに預けているUSDコイン(USDC)に対して、特に複雑な手続き(ステーキングやロックアップ:一定期間資金を預け入れること)なしで年利4.1%の報酬を得られる特典もある。
このサービスは現在、オープンベータ版(試用版)として公開されており、コインベースの開発者向けサイトで詳しい使い方や設定方法(ドキュメント)が提供されている。
今回の発表は、安全な資産管理と、柔軟なアプリケーション開発の両立を目指し、開発者向けのブロックチェーンインフラ(基盤)における地位を固めようとするコインベースの戦略の表れと言える。