アルゼンチン当局、ミレイ氏のLIBRA宣伝を倫理違反なしと判断

アルゼンチンの汚職防止局(OA)は7日、ハビエル・ミレイ大統領による暗号資産(仮想通貨)LIBRAの宣伝行為について、倫理規定違反には当たらないとの正式判断を発表した。
この問題は、ミレイ大統領が個人のXアカウントで「Viva La Libertad(自由万歳)」プロジェクトの一環としてLIBRAトークンを宣伝したことに端を発する。投稿後にトークンの価格が約5ドルまで急騰し、時価総額は45億ドルに達した。
個人的投稿との判断根拠
汚職防止局は、ミレイ大統領のX投稿が公的機関の資源や制度的支援を一切使用していなかったことを重視した。決議書によると、ミレイ氏は投稿で自身を「経済学者」として紹介しており、公職者としての立場を利用していなかったとしている。
また、同氏のXアカウントは大統領就任前、さらには国会議員就任前から存在していたもので、政府の公式アカウントではないことも判断材料となった。決議書は「分析対象の投稿は公共政策、政府プログラム、政府決定、または法的・予算的効果を持つ発表には言及していなかった」と明記している。
この判定により、「クリプトゲート」と呼ばれたスキャンダルの行政的な側面は一旦の決着を見た形となる。ただし、同局自体がミレイ政権によって任命されたメリク氏が率いており、判断の客観性を疑問視する声も上がっている。
刑事捜査は継続中、国際的な展開も
行政的な倫理違反の疑いは晴れたものの、この問題が完全に終結したわけではない。アルゼンチン国内ではマリア・セルビニ連邦判事による刑事捜査が継続しており、詐欺や証券法違反の疑いで捜査が進められている。
国際的にも波紋は広がっており、米国司法省への刑事告発や、米国、英国、スペインの裁判所で集団訴訟が提起されている。これらの訴訟では、市場操作や投資家保護違反の疑いが争点となっている。
LIBRAトークンを開発したデラウェア州拠点のKelsier Ventures社のヘイデン・デイビス最高経営責任者(CEO)は、2月17日の動画声明で「ミレイ氏とそのチームが当初の約束を破り、支援を撤回したことで市場が崩壊した」と主張している。
一方、デイビス氏は同ミームコインで1億1300万ドルの利益を得たことも認めており、利益相反の疑いも指摘されている。
現在LIBRAは約832万ドルの時価総額で取引されており、ピーク時から99%以上下落した状態が続いている。このスキャンダルは、アルゼンチンにおける新しい仮想通貨規制の議論を加速させるとともに、政治家の暗号資産関連発言に対する厳格な監視の必要性を浮き彫りにした。