テザーCEO、IPO評価額74兆円は「控えめ」との見解

ステーブルコイン発行大手テザーのパオロ・アルドイノCEOは8日、同社の新規株式公開(IPO)における企業評価額が5150億ドル(約74兆円)に上るとの試算に対し、控えめな可能性があるとの見解を示した。
この評価額は、実現すれば同社がコストコやコカ・コーラを上回り、世界で19番目に大きな企業になることを意味する。
しかし、テザーは非公開企業として事業を継続する方針を改めて強調している。
74兆円の評価額は「控えめ」か
この評価額は、データ分析企業Artemisのジョン・マCEOが試算したものだ。
同氏はステーブルコインのテザー(USDT)の供給量が2025年に500億ドルから600億ドル増加し、平均1700億ドルになると仮定した。
マ氏は、4.2%の連邦資金金利を基準としたEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)マージンを用い、テザーの2025年のEBITDAを74億ドルと予測した。
これにより5150億ドルという評価額を導き出した。
この試算についてアルドイノCEOは「美しい数字だ」と述べつつも、テザーが保有するビットコイン(BTC)や金の準備資産の拡大を考慮すると、真の価値を過小評価している可能性があると指摘した。
これらの資産は長期的な安定性と収益性を高める要因となる。
IPOは否定、非公開での成長戦略を維持
アルドイノCEOの発言は、競合であるステーブルコイン発行企業サークル(Circle)社が6月5日にニューヨーク証券取引所(NYSE)へ上場し、株価が167%急騰した直後に行われた。
しかし、テザーは同様の道をたどる計画はないと明言している。
同CEOは、テザーの価値の源泉として準備資産、特に85億ドル(約1兆2240億円)相当のビットコインと12億ドル(約1728億円)相当の金を強調した。
従来の評価モデルでは、これらの資産の成長ポテンシャルを完全には捉えきれない可能性がある。
アルドイノCEOは「株式公開の必要はない」と述べ、非公開企業のままでの成長に自信を示した。
競合のIPO成功はステーブルコイン発行企業への市場の関心を示したが、テザーは資金調達よりもリスク管理を優先する姿勢だ。
同社の動向は、他の暗号資産(仮想通貨)市場全体にも影響を与える可能性があるため、引き続き注目される。