三井住友らも参画、国際決済銀行がブロックチェーンで送金革新

国際決済銀行(BIS)は16日、クロスボーダー決済の効率化を目指す「Project Agorá」(プロジェクト・アゴラ)の設計フェーズを開始した。
このプロジェクトには、40社以上の民間金融機関が参加し、7つの中央銀行と協力してトークン化技術の活用を探る。
Project Agoráの概要と目的
Project Agoráは、BISが2024年4月に立ち上げた取り組みだ。ギリシャ語で「市場」を意味する名称が示すように、このプロジェクトは金融の中心地としての機能強化を目指している。
プロジェクトの主な目的は、トークン化技術を活用してホールセールのクロスボーダー決済を改善することだ。
具体的には、トークン化された中央銀行マネーと商業銀行の預金をシームレスに統合する方法を探る。
参加する7つの中央銀行には、イングランド銀行、日本銀行、韓国銀行、メキシコ銀行、スイス国立銀行、ニューヨーク連邦準備銀行、そしてユーロシステムを代表するフランス銀行が含まれる。
トークン化技術がもたらす可能性
トークン化とは、実物資産をデジタル化する技術だ。この技術を国際送金に適用することで、現在のシステムが抱える様々な非効率性を解消できる可能性がある。
暗号通貨(仮想通貨)の基盤技術であるブロックチェーンを活用することで、より安全で透明性の高い取引が実現できると期待されている。BISは、Project Agoráを通じて「統合台帳」のコンセプトを実践し、公共と民間のプログラマブルな金融プラットフォームの構築を目指している。
これにより、スマートコントラクトとプログラマビリティを活用した新機能の提供が期待される。
日本からはみずほ銀行や三井住友銀行も、このプロジェクトへの参加を表明している。同行は、クロスボーダー決済の課題解決に貢献し、サービス向上に取り組む姿勢を示した。
国際送金の課題解決への挑戦
現在のクロスボーダー決済システムには、いくつかの構造的な非効率性が存在する。例えば、各国の法律や規制の違い、技術的要件の相違、営業時間の違いなどが挙げられる。
また、1回の送金に対して複数の金融機関がそれぞれAML(マネーロンダリング防止)やCFT(テロ資金供与対策)の手続きを行う必要があり、プロセスが複雑化している。
Project Agoráは、これらの課題に取り組むことで、より効率的で安全な国際送金システムの実現を目指している。
BISのイノベーションハブが手がけるこのプロジェクトは、実験的な性質を持ちつつ、グローバルな中央銀行コミュニティに公共財を提供することを目的としている。今後の進展が注目される。