暗号資産(仮想通貨)の損益通算とは？損失処理の方法などを解説

暗号資産（仮想通貨）取引の広がりとともに、税金計算、特に「損益通算」への関心が高まっています。損益通算とは、期間内の利益と損失を相殺し、課税対象となる所得を圧縮できる仕組みです。

本記事では、仮想通貨における損益通算の基本ルール、具体的な活用ケース、そして節税に役立つヒントを解説します。仮想通貨の税金と損益通算の知識を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

仮想通貨の損益通算とは？

「損益通算」とは、一定期間内（通常は1年間）の様々な所得における利益と損失を相殺する制度。この制度の最大のメリットは、利益と損失を相殺することで課税対象となる所得金額を圧縮できる点です。

結果として、所得税や住民税の負担軽減につながります。損益通算の知識は仮想通貨の億り人を目指す人にとっても重要な知識となっています。

しかし、損益通算は全ての所得間で自由に行えるわけではありません。日本の所得税法では所得が10種類に分類されており、どの所得同士で通算できるかには細かいルールが存在します。

仮想通貨で得た利益の分類

仮想通貨取引によって得られた利益は、原則として所得税法上の「雑所得」に分類。「雑所得」とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも当てはまらない所得を指します。

仮想通貨の利益のほかには、公的年金等や、事業規模ではない副業による所得（例えば、原稿料やシェアリングエコノミーによる収入など）が雑所得に該当します。

雑所得の特徴

仮想通貨取引による利益が分類される「雑所得」は、他の所得区分とは異なるいくつかの重要な特徴を持っています。特徴を理解しておくことは、適切な税務処理を行う上で重要です。

主な特徴は以下の3点です。

• 特別控除がない
• 赤字の繰越ができない
• 総合課税以外の所得と損益通算ができない

以下、個別に解説します。

特別控除がない

雑所得には、他の所得区分で一般的な特別控除制度が適用されません。

例えば一時所得には最大50万円の控除がありますが、雑所得では収入から必要経費を差し引いた所得金額のほぼ全額が課税対象となります。

結果として、他の所得より税負担が相対的に重くなる可能性があり、この点は仮想通貨取引の利益も例外ではありません。なお、仮想通貨の税金に関する最新情報は、常に把握しておくことが重要です。

赤字の繰越ができない

雑所得で発生した損失は、翌年以降の利益と相殺できる「繰越控除」の対象外です。

株式投資などでは損失を数年間繰り越せますが、仮想通貨取引を含む雑所得の赤字はその年限りで処理されます。仮想通貨の損益通算で年またぎの損失繰越はできず、将来の節税には活かせません。

価格変動の激しい資産を扱う際は、この点を十分に理解しておく必要があります。その上で、仮想通貨の税金シミュレーションを行うなど、税務管理を実践することが重要です。

総合課税以外の所得と損益通算ができない

雑所得の損失は、給与所得や事業所得など他の所得区分の利益とは基本的に損益通算できません。

つまり、仮想通貨取引の損失を給与から差し引くことは不可能です。ただし、例外として同じ「雑所得」に分類される所得同士であれば、同一年内の損益通算が可能です。

例えば、複数のアルトコイン取引間の損益や、他の副業による雑所得との合算がこれに該当します。

仮想通貨の損益通算の方法

ここでは、仮想通貨の税金における損益通算の方法と、仮想通貨の確定申告に向けた税金計算（損益計算）の基礎を解説します。

特に、仮想通貨の損失は税金の計算上、翌年に繰り越すことが不可能。そのため、仮想通貨の税金については年間損益を意識し、年内に損益を調整することが節税の鍵となります。

具体的な損益通算の方法と節税のポイントは以下の通りです。

• 各仮想通貨の損益を正確に計算する
• 年末に向けて損益を調整する（損益最適化）

以下、詳細に解説します。

各仮想通貨の損益を正確に計算する

まず、保有している各仮想通貨について、年間の売買取引から生じた損益（実現損益）を個別に計算します。基本的な計算式は以下の通りです。

計算式：実現損益 = 売却価格 − (1通貨あたりの取得価額 × 売却数量)

例えば、1BTCあたり150万円で購入したビットコインを3BTC保有しており、そのうち2BTCを1BTCあたり200万円で売却した場合の実現損益は以下のとおりです

実現損益：(200万円 × 2BTC) − (150万円 × 2BTC) = 100万円

この計算を取引ごとに行い、年間の合計損益を算出します。ビットコインの税金計算において損益通算を適用する際も、個々の取引を正確に記録することが不可欠です。

正確に記録することがビットコインの節税にもつながります。

年末に向けて損益を調整する（損益最適化）

仮想通貨の税金計算は1月1日から12月31日までが対象期間です。この期間内の実現損益をできるだけゼロに近づける、あるいはコントロールすることが節税の鍵となります。

具体的な調整方法は、年間の取引状況や保有状況によって異なります。以下、３つのケースについて解説します。

損益通算のためには、日頃から取引履歴を正確に記録し、損益状況を把握することが不可欠。コインチェックの利益計算機能のような取引所提供のツールなどを活用すると効率的です。

意図しない仮想通貨の脱税防止のためにも、日頃の適切な税務管理をこころがけましょう。

仮想通貨取引における必要経費とは？

仮想通貨取引の利益（所得）計算では、収入から必要経費を差し引けます。経費を正しく計上すれば課税所得が減り節税に繋がりますが、認められる範囲の正確な理解が重要です。

基本は「仮想通貨取引で利益を得るために直接要した費用」です。取引に直接関連しない個人的支出や、関連性が不明確な家事関連費は認められにくい傾向にあります。

以下に、必要経費として認められる・認められない可能性が高いものの例をまとめます。

また、必要経費計上のポイントと注意点は以下のとおりです。

どの費用が経費として認められるかは個々の状況で異なる場合があります。不明な点や判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

仮想通貨における税金の計算方法

仮想通貨取引によって得られた利益（所得）には、所得税と住民税が課されます。これらの税金を正しく計算し納付するためには、以下のポイントを理解しておく必要があります。

• 課税対象となる所得と総合課税
• 所得税の計算（累進課税）
• 住民税の計算
• 仮想通貨の所得（損益）計算方法

ポイントについて具体的に解説します。

課税対象となる所得と総合課税

まず、仮想通貨取引による所得は、原則として「雑所得」に分類されます。

この雑所得は「総合課税」の対象となるため、給与所得や事業所得（副業が事業規模でない場合）など、他の所得と合算した総所得金額に対して税金が計算されます。

所得税の計算（累進課税）

日本の所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得金額が大きくなるほど段階的に高い税率が適用されます。具体的な所得税の税率は以下の通りです。

例えば、課税される所得金額が400万円の場合、税額は単純に「400万円 × 20%」とはなりません。正しくは、各所得段階に応じて税率を適用し、それらを合計して算出します。

もしくは、速算表の控除額を用いて以下のように計算することもできます。

仮想通貨で得た利益も、このように他の所得と合算され累進課税が適用されます。仮想通貨の税率についても理解しておくことが重要です。

住民税の計算

所得税とは別に、住民税も課されます。住民税の税率は、所得に対して一律10%（市町村民税6%、道府県民税4%の合計）が原則です。

したがって、所得税と住民税を合わせると、所得金額によっては最大で約55%（所得税45% + 住民税10%）の税負担となる可能性があります。

仮想通貨の所得（損益）計算方法

仮想通貨の売買によって生じた所得を正確に計算するためには、その取得価額と売却価額を把握する必要があります。

国税庁は、仮想通貨の所得計算方法として、以下のとおり「移動平均法」または「総平均法」のいずれかを用いることを認めています。

• 移動平均法： 仮想通貨を購入する都度、その時点での保有総額と総数量から平均取得単価を算出し、売却時の原価とする方法。
• 総平均法： 1年間（1月1日から12月31日まで）に購入した仮想通貨の総購入金額を総購入数量で割り、年間の平均取得単価を算出。そして、その年の売却分について、この平均取得単価を元に売却原価を計算する方法。

仮想通貨確定申告における損益通算の際には、事前に届け出た方法で計算します。届け出がない場合は総平均法となり、一度選択した計算方法は原則3年間変更できません。

正確な損益計算は複雑なため、税理士などの専門家への相談も検討しましょう。

仮想通貨の損益通算に間してよくある質問