ベトナム、デジタル資産を規制する新法を可決|2026年施行へ

ベトナム国会は14日、デジタル技術産業法を可決した。この新法は2026年1月1日に施行され、急成長するデジタル経済分野における規制の枠組みを定めるものである。
この法律は、同国のデジタル経済に対する規制を強化し、国際基準への準拠を目指す上で重要な一歩となる。これまで法的に曖昧だったデジタル資産の取り扱いが、これにより大きく前進することになる。
ベトナム初のデジタル資産法、その概要
今回の法可決は、ベトナムのデジタル分野における画期的な出来事である。これまで同国では、暗号資産(仮想通貨)を含むデジタル資産に関する包括的な法的定義や規制が存在しなかった。
新法の中核をなすのは、デジタル資産を「仮想資産」と「暗号資産」の2種類に明確に分類した点だ。この定義は、今後の規制策定や監督、税制などを検討する上での基礎となる。
政府は、この法的枠組みを通じて、イノベーションを阻害することなく、市場の透明性と安定性を確保することを目指している。デジタル技術産業の健全な発展を促すための重要な一歩と位置づけられる。
国際的な要請への対応とAML/CFT強化
この法整備の背景には、国際社会からの強い要請がある。特に、金融活動作業部会(FATF)は、マネーロンダリングやテロ資金供与のリスクが高い分野として仮想通貨を注視してきた。
FATFはベトナムを「監視強化リスト(グレーリスト)」に掲載しており、仮想通貨関連の規制強化を強く勧告していた。新法は、この勧告に具体的に応えるものであり、AML(マネーロンダリング対策)およびCFT(テロ資金供与対策)の体制を大幅に強化する内容を含む。
これにより、ベトナムは国際的な金融基準への準拠を示し、グレーリストからの脱却を目指す。国際金融システムにおける信頼性の回復は、同国の経済にとって喫緊の課題となっている。
投資家保護と市場の健全化への期待
規制のもう一つの重要な目的は、投資家の保護である。法的な枠組みが不明確な状況では、詐欺や市場操作などのリスクが高まり、一般の投資家が不利益を被る可能性があった。
新法は、仮想通貨交換業者や関連サービス事業者に対して、ライセンス制度や利用者保護に関する義務を課すことが想定される。明確なルールを設けることで、不正行為を未然に防ぎ、利用者が安心して取引できる環境を整備する。
ベトナムにおける仮想通貨の普及率は世界的に見ても高い水準にある。今回の法整備は、多くの国民が参加する市場の健全な成長を後押しし、長期的にはベトナムのデジタル経済全体の競争力向上に貢献する可能性がある。今後は、ライセンスを取得した仮想通貨取引所の情報なども投資家にとって重要になるだろう。