トークン化米国債、70億ドル超に拡大|DeFi担保需要で新局面

トークン化米国債市場はこのほど、70億9000万ドル(約1兆円)の規模に達した。
ブラックロックやフィデリティなど大手金融機関の参入により、従来の米国債をブロックチェーン技術でデジタル化した新しい投資商品が急成長している。
トークン化米国債とは、従来の米国債をブロックチェーン上でデジタル資産として表現したもの。3月に50億ドルを突破してから約2カ月で20億ドル以上成長し、平均利回りは4.12%となっている。
ブラックロックが市場をけん引
市場の41%を占めるブラックロックのBUIDLファンドが29億1000万ドルでトップを走る。
同ファンドは最低投資額500万ドルで機関投資家限定となっており、3月の開始から6週間で急成長を遂げた。一方で保有者数は74人と少数精鋭の構成となっている。
フィデリティも5兆8000億ドルの運用資産を持つ大手として、3月にイーサリアム(ETH)上でのトークン化マネーマーケットファンドの認可を申請。同社幹部は「取引効率と資本配分の改善が期待できる」と述べている。
Ondo Financeの商品も約12億7000万ドルに達し、1カ月で53%成長している。
同社のUSDYトークンは1万5438人の保有者を持ち、個人投資家層にも広く普及している点でブラックロック商品と対照的だ。非米国投資家向けの設計で、グローバル需要の拡大を示している。
分散型金融で担保として活用
最も注目される用途が、分散型金融(DeFi)での担保利用だ。従来は現金調達のために資産売却が必要だったが、トークン化米国債を担保にすることで、より効率的な資金調達が可能になる。
新しい仮想通貨(暗号資産)市場の下落局面で、投資家は安全な利回り商品としてトークン化米国債への資金移動を活発化させている。
専門家は「株式から米国債への質への逃避と同様の動き」と分析している。
複数ブロックチェーンで展開
イーサリアムが43億ドルでシェア首位、ステラ(XLM)とソラナ(SOL)が続く。イーサリアムが主流となった背景には、既存の分散型金融アプリケーションとの連携しやすさがある。
現在46種類の商品が提供され、保有者数は1万8285人に達している。
今後はDeFiプロトコルSparkが10億ドルの追加投資を予定しており、さらなる成長が見込まれる。
規制環境の整備や機関投資家の本格参入により、専門家は2025年末までに市場全体が500億ドル規模に拡大すると予測している。