自民・国民は減税推進|参院選で問われる日本の暗号資産政策

第27回参議院選挙は、3日に公示され、暗号資産(仮想通貨)政策が各党の重要な争点の一つとなっている。
日本の仮想通貨市場は急速に拡大しており、2025年1月時点で国内の利用者口座数は延べ1,214万口座、預託金残高は約5兆円に達した。国民のおよそ10%が口座を保有する計算となり、政治的にも無視できない存在感を示している。
このような状況下、各政党は国際競争力の向上や利用者保護の観点から、独自の政策を打ち出している。特に、現行の最大55%の総合課税から、より負担の軽い税制への改正が最大の焦点だ。
税制改正が最大の争点、各党の政策
自民党は、デジタル社会推進本部が「web3提言2025」を取りまとめ、仮想通貨政策を積極的に推進している。提言の柱は、税制を20%程度の申告分離課税へ変更することと、規制の枠組みを資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行させることだ。これにより、株式などと同等の投資家保護を目指す。
国民民主党は、最も踏み込んだ減税策を掲げる。玉木雄一郎代表は、申告分離課税20%の導入に加え、仮想通貨同士の交換時を非課税とすることや、レバレッジ倍率の引き上げなどを提案している。人材や企業の海外流出を防ぐ狙いがある。
立憲民主党も、国際競争力確保の観点から税制の見直しを政策に掲げている。ただし、投資家保護を前提とした適切なルール整備を重視する慎重な姿勢も見せる。
一方、日本共産党は、仮想通貨を「価値の裏付けのない危険な決済手段」と位置づけ、減税に明確に反対し、規制強化を求めている。
このほか、日本維新の会は規制改革によるイノベーション促進を、参政党は米国の政策を参考に国家レベルでのビットコイン(BTC)保有などを提案しており、各党の立ち位置はさまざまだ。
政策実現に向けた課題と今後の展望
申告分離課税の実現に向けては、与党の税制改正大綱での議論が鍵となる。金融庁は2025年6月末までに制度見直しを完了する方針を示しており、順調に進めば2026年度からの新税制導入も視野に入る。
しかし、実現には課題も多い。税制改正の前提として、取引業者から税務当局へ全取引内容を報告するシステムの構築が不可欠とされる。
また、金商法へ移行するにあたり、発行体の情報開示義務やインサイダー取引規制など、包括的な投資家保護制度の設計が求められる。
国際競争力も重要な論点だ。日本の最大55%という税率は、ドイツ(1年以上の保有で非課税)やシンガポール(原則非課税)などと比べて著しく高い。
この税制が、有望な人材や企業が海外へ流出する一因になっているとの指摘は根強い。個々の投資家にとっても、仮想通貨税金の仕組みを正しく理解し、適切に申告することが重要となる。
今回の参議院選挙の結果は、日本の仮想通貨政策の方向性を大きく左右する。投資家保護と市場の発展、そして国際競争力。これらのバランスをいかに取るか、各党の掲げる政策の実現性とあわせて、有権者の判断が問われることになるだろう。