香港が暗号資産デリバティブ解禁、21兆ドル市場への道筋示す

香港証券先物委員会(SFC)は4日、機関投資家およびプロ投資家向けに暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引を解禁する規制枠組みを最終調整していることが明らかになった。
この動きは、香港を世界的な暗号資産(仮想通貨)ハブとして確立する戦略の重要な転換点となる。
今回の規制枠組みは、先物、オプション、その他のデリバティブ商品を対象としている。2025年第1四半期には、暗号資産デリバティブの取引量が21兆ドル(約3024兆円)に達し、現物市場の4.6兆ドル(約662.4兆円)を大幅に上回っている。この圧倒的な取引量は、デリバティブ市場の重要性を物語っている。
機関投資家向け規制の詳細
SFCの新たな規制は、機関投資家とプロ投資家に特化したアプローチを採用している。個人投資家とは明確に区別し、より高度な金融商品へのアクセスを提供する方針だ。
4月から仮想資産プラットフォームのライセンス取得業者にステーキングサービスの提供が認められており、今回のデリバティブ取引解禁により、これらの業者がより包括的なサービスを展開できるようになる。規制当局は機関レベルのコンプライアンスとヘッジツールの整備を優先事項としている。
デリバティブ取引プラットフォーム大手のDeribitは、規制上の障壁が機関投資家の参入を阻んでいると指摘していた。今回の動きは、こうした課題に対する直接的な対応策となる。
アジア金融ハブとしての戦略
香港は、シンガポールやドバイといった競合する金融センターとの差別化を図るため、税制優遇措置と明確な法的枠組みを中核とした戦略を展開している。暗号資産デリバティブの解禁は、この戦略の重要な要素だ。
デリバティブ市場は流動性、リスク管理、裁定取引の機会を提供し、高度な投資家にとって不可欠な要素となっている。規制当局は、デリバティブが暗号資産市場のボラティリティと取引量を支配していることを認識している。特にビットコイン(BTC)などの主要な暗号資産においては、そのデリバティブ市場の影響が大きいと見られている。
今回の規制枠組みは、香港立法会で可決されたステーブルコイン法案と連動している。同法案は2025年後半に施行予定で、暗号資産関連規制の包括的な整備を進める。これにより、21兆ドル規模のデリバティブ市場へのアクセスが可能となり、プロ投資家にとって香港の魅力が大幅に向上する見込みだ。