Geminiとコインベース、MiCA規制下でEUライセンス取得へ

米国の暗号資産(仮想通貨)取引所Geminiとコインベースはこのほど、EUの仮想通貨市場規則(MiCA)に基づき、それぞれマルタとルクセンブルクでライセンス取得を進めていることが分かった。
2025年初頭に施行されたMiCAは、加盟国が発行する単一ライセンス制度だ。これにより、仮想通貨企業はEU全27カ国で事業展開を進めることが可能となる。
大手取引所、MiCA下の欧州市場参入を加速
Geminiは迅速な承認プロセスで知られるマルタでのライセンス取得を目指す。マルタはMiCA施行後、数週間でOKXやCrypto.comなど大手取引所へライセンスを付与した実績がある。
一方、コインベースはEUの主要な金融拠点であるルクセンブルクでライセンス取得に向けた手続きを進めており、数週間前には申請を提出済みだ。年内には現地従業員を20人以上増員し、欧州市場での仮想通貨ビジネスの強化を図る方針だ。
MiCAの単一市場アプローチにより、各国で個別に承認を得る必要がなくなる。だが、規制当局は管轄区域ごとにライセンス審査の厳格さに差が生じる可能性を警告している。
規制当局の懸念と監視強化
マルタがOKXをはじめとする仮想通貨企業に対し迅速にライセンスを付与したことが、他のEU加盟国の規制当局の間で懸念を呼んでいる。審査の厳格さや監督体制の甘さが問題視されているためだ。
この状況を受け、欧州証券市場監督局(ESMA)は、マルタのライセンス審査手続きに対する調査を開始。規制の抜け穴を防ぐ目的で、今後は監視体制の強化が進められる見通しだ。
コインベースのルクセンブルク進出は、米国規制強化を背景とする欧州戦略の一端として位置付けられる。多くの企業が仮想通貨取引所市場への展開を模索する中、Geminiのマルタでの動きは、簡易な手続きによるEU市場参入の需要の高さを示している。
いずれかの企業がライセンスを確実に取得すれば、EUにおける競争優位性が大幅に高まる。新たな参入者が相次ぐ中、市場の力学が再形成される可能性がある。今回の動きは、MiCA下で市場アクセスと規制の厳格性のバランスを巡る緊張感を浮き彫りにした。