テザー、約129億円で金関連の企業株を取得|BTCと連携強化へ

ステーブルコインのテザー(USDT)を発行するテザー・インベストメンツは12日、金関連企業エレメンタル・アルタス・ロイヤルティーズの株式を大量に取得した。
この取引は、金と暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(BTC)を裏付けとした金融インフラの構築を目指す同社の戦略の一環である。
テザーはTSXベンチャー取引所に上場するエレメンタル・アルタス社の普通株7842万1780株を、1株あたり1.55カナダドルで取得した。
総額は8940万ドル(約129億円)に上る。
ロイヤリティモデルを通じた戦略的投資
今回の取得により、テザーは同社の発行済み株式の31.9%を保有することになり、既存の保有分と合わせて議決権比率は33.7%に達した。
この株式は、エジプト富豪サワリス家傘下の投資会社ラ・マンチャ・インベストメンツから取得されたものである。
テザーがエレメンタル・アルタス社に出資した背景には、同社が採用する独自のビジネスモデルがある。
エレメンタル・アルタスは、鉱山の運営に直接関与せず、採掘された金属の売上から一定割合の収益を受け取るロイヤリティ契約を専門とする企業だ。
このモデルにより、投資家は鉱山運営に伴う操業リスクやコストを負うことなく、金価格の上昇による恩恵を受けることができる。
これは、安定した実物資産への投資を重視するテザーの戦略と合致する。
エレメンタル・アルタスは現在、オーストラリアのカーラウィンダー鉱山やナイジェリアのセギロラ鉱山など、7カ国にわたる12の金プロジェクトに関与している。
これらのプロジェクトからの年間金換算生産量は、2026年まで3万5000~4万オンスに達すると見込まれている。
デジタル資産と実物資産の融合を加速
今回の株式取得は、テザーが推進する広範な戦略の一部と位置づけられる。
同社は近年、デジタル資産と実物資産の融合を積極的に進めている。
最近では5億ドル規模のビットコインマイニング事業への投資や、3億8000万ドル相当のビットコイン購入を発表したばかりだ。
金という伝統的な価値保存手段と、ビットコインというデジタル時代の価値保存手段を組み合わせることで、より強固で安定した金融エコシステムの構築を目指している。
今回の投資は、同社が発行するステーブルコインの価値を裏付ける資産の多様化という側面も持っている。
さらに、テザーは2025年10月29日以降、投資運用企業アルファストリーム・リミテッドから追加で3440万株を取得するオプションも確保した。
このような実物資産への投資は、仮想通貨市場の成熟を示す動きとして評価できる。
このオプションが行使されれば、同社の出資比率は47.7%まで高まるとの報告がある。