USDC発行元のサークル、米国初デジタル銀行の設立を申請

ステーブルコイン発行企業のサークルは30日、米通貨監督庁(OCC)に対し、全国規模で事業を行える信託銀行の設立を申請した。
時価総額410億ドルの同社が申請した銀行名はFirst National Digital Currency Bank, N.A.だ。
承認されれば、米国初の全国デジタル通貨銀行が誕生することになる。
この動きは、デジタル資産の分野で規制に準拠した金融インフラを構築する同社の戦略を明確に示している。
新銀行の役割と事業内容
新銀行の主な役割は、USDコイン(USDC)の裏付けとなる流動資産を管理・保管するUSDC準備金の運営だ。
これにより、現在は資産運用企業BNYメロンやブラックロックなどの提携先に依存している準備金の管理業務を内製化することが可能になる。
また、新銀行は機関投資家向けにデジタル資産のカストディサービスを提供する。
ただし、その対象は主に株式や債券といったトークン化された現実世界の資産に限定される。
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような暗号資産(仮想通貨)の直接的なカストディは行わない計画だ。
さらに、この信託銀行は預金の受け入れや融資といった従来の銀行業務は手掛けない。
その業務内容は、あくまでカストディと管理サービスに特化することになる。
規制対応と戦略的背景
今回の申請は、米国で審議が進むステーブルコイン規制法案への対応という側面を持つ。
提案されているGENIUS法案などは、ステーブルコイン発行者に対し、準備金の月次開示や高品質な流動資産を担保として使用することを義務付ける内容だ。
サークルは、この信託銀行の設立を通じて、将来の厳しい規制要件に対応できるインフラを整備する狙いがある。
同社はこれまでにも、2015年にニューヨーク州金融サービス局から初のビットライセンスを取得するなど、規制当局と協調する姿勢を示してきた。
サークルのジェレミー・アレールCEOはこの動きを、透明性が高く、インターネットネイティブな金融システムを構築する一歩と説明した。
同氏は、これにより米ドルの強靭性が強化されるとも述べている。
最近の株式公開や年間19億ドルに上る収益は、同社が機関投資家向けのインフラを拡大する能力を持つことを裏付けている。
このような動向は、代表的なビットコインの市場にも影響を与える。