スチーム(STEEM)は、新たなコンテンツ共有のあり方を提案するSNSブロックチェーンです。クリエイターに暗号資産(仮想通貨)で報酬を還元する仕組みは、業界を先取りする次世代のフレームワークと捉えられています。
スチーム(STEEM)とは?
スチーム(STEEM)とは、DApps(分散型アプリ)向けのブロックチェーンのことです。100万人以上のユーザーに使用されている人気ネットワークで、スチームを採用したアプリは400を超えます。
Steemブロックチェーンは主に、SNSプラットフォーム向けに設計されています。SNSアプリは通常、「いいね」や「シェア」などの投票システムを採用しており、スチームはこれらの要素を独自の分散型プラットフォームに統合するものです。
これにより、ユーザーはSNS上での活動に対して報酬を受け取ることができます。報酬還元にはネイティブトークンのSTEEMが用いられ、匿名性の高い支払いシステムが特徴です。
スチームは、2016年3月に公開された比較的新しいプロジェクトです。検閲なしでデジタルコンテンツを収益化することを目指しており、すでに様々なDAppsで採用されています。
スチーム(STEEM)の仕組み
スチームは、アプリと連携してコンテンツ作成者に報酬を与える仕組みを中心としています。報酬獲得にはSteemネットワークへの登録が必要で、単一のログイン情報で複数のアプリを利用できるのが特徴です。
アカウント設定後は、SteemのSNSプラットフォームに投稿することができます。人気の投稿はアップボード(優先表示のこと。いわゆる「アゲ」)され、アップボードの1週間後に報酬が支払われます。
スチームの重要点は、以下のとおりです。
- コンテンツが注目を集めれば集めるほど、報酬額が大きくなる。
- 投稿の価値は投票システムを通じて決定され、価値の高い投稿はフィードに表示されやすくなる。
- Steemitは功績主義に基づいており、スチームパワー(SP)の高いユーザーに影響力を割り当て、報酬を還元する。
以上のように、スチームはSTEEM仮想通貨、スチームドル(SBD)、スチームパワー(SP)という3種類の通貨単位を軸とする枠組みです。このうち、STEEMとSBDは取引を通じて他の通貨と交換できます。
STEEM仮想通貨
SEEM仮想通貨は、スチームネットワークの基軸通貨です。他の2種類の通貨価値を決定するトークンでもあり、取引所を介して他の暗号資産と交換できます。
また、スチームを利用するにはSTEEMをスチームパワー(SP)に変換する必要があります。
スチームパワー(SP)
スチームパワー(SP)は、長期投資用のネットワーク通貨です。仮想通貨STEEMを変換することで入手でき、プラットフォームの利用に直接使用することができます。
SPの大きさは影響力の大きさと直結しており、より多くのSPを持つことで受け取る報酬額も大きくなります。SPをSTEEMに逆変換することもできますが、その際は13週間の「冷却期間」が設けられます。これは、STEEMトークンの価格を安定させるための施策です。
スチームドル(SBD)
スチームドル(SBD)は、Steamネットワークの短期債務を表します。SPと同様、デフォルトの報酬通貨でもあり、1SBDの価値は1米ドルに設定されています。
SBDを保有するユーザーは、保有分の価値をコミュニティに貸し出すことでネットワークの成長を促進します。また、SBDは年率10%の利息が受け取れるのも魅力です。
SBDの債務がSteem市場総額の10%を超える場合、ブロックチェーンは変換によるSteem生成量を市場総額の最大10%に自動調整します。これは、ネットワークの債務対所有率が10%を超えないようにするためです。
スチームドルは柔軟な運用が可能なのがポイントで、主に以下の4つの使い方ができます。
- スチームドルをSTEEMに変換する(通常、3〜5日かかります)。
- スチームドルを保持し、年率10%の利息を得る。
- スチームドルをスチームパワーに変換し、長期投資を行う。
- スチームドルを取引所の他の通貨と交換する。
スチームネットワークの動作原理
スチームの立ち上げとICO
ICOを行わなかったスチームは、立ち上げの際にマーケティングをうまく利用して知名度を獲得しました。現在流通しているSteemの大半は、ベータ版立ち上げ時にマイニングされたものです。STEEMの早期投資者やマイニング実行者は、スチームの成長により多額の報酬を獲得しています。
スチームとマイニング
Steemネットワークは当初、通貨供給量が0の状態からスタートしました。その後、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)と呼ばれるトークン生成プロトコルを用い、スチームトークンの生成と配分が行われるようになりました。現在はSteamを生成(マイニング)することはできません。
現在のSteemは、ディレゲーテド・プルーフ・オブ・ステーク(DPOS)と呼ばれるアルゴリズムを使用しています。これは国会運用と似た仕組みで、ユーザー投票でトップ21につけたスチーム保有者にネットワークに関する意思決定を委ねる仕組みです。選挙の当選者は、ウィットネスという名前で呼ばれています。
スチームのトランザクションと拡張性
スチームは、約1,000トランザクション/秒という高レートで取引を処理できます。また、通信プロトコルとサーバー容量を変更することで、約10,000トランザクション/秒以上を達成でるとしています。
Steemの開発者はホワイトペーパーで「ブロックチェーンは使用料を一切課さないしない方が良い」と述べており、実際にスチームは手数料無料の部6チェーンです。
スチームの年間インフレ率
STEAMトークンは毎日生成されており、総流通量は年間約9.5%のペースで増加しています。インフレ率は毎年0.5%(または250,000ブロックごとに0.01%)ずつ減少し、2037年ごろに0.95%に達するまで続く予定です。
新しく生成されたトークンは、以下の方法で割り当てられます
- 75%は報酬プールに供給され、コンテンツの作成者とキュレーターに支払われる
- 新しいトークンの15%はSPの保有者に与えられる
- 残りの10%は、Steemブロックチェーンのウィットネスに支払われる
Steemのインフレモデルは持続不可能だとする意見がありますが、開発者は通貨の数量が必ずしも通貨の価値に直ちに直接的な影響を与えるわけではないと主張しています。
例えば、2008年8月から2009年1月の期間に、米国のマネーサプライは年100%以上成長し、その後の6年間も年20%以上成長し続けました。また、ビットコインの最初の8年間のインフレ率は10%を超え、最初の5年間は30%を超えています。
スチーム価格には常に圧力がかかると言われていますが、これはトークンの長期保有者やプラットフォームのユーザーが増えることで緩和されると見られています。Steamネットワークは100万人以上のユーザーに利用されており、ユーザー数が更に増えることでインフレが緩やかになるか、デフレに転じることもあり得ると言われています。
スチームのDApps
現時点で、最も人気のあるスチームDAppsをまとめてみました。
- Steemit・・・大手掲示板Redditと、記事投稿サイトのMediumに触発されSNSブログ。
- DTube・・・YouTubeの分散型とも言うべき動画配信プラットフォーム。
- eSteem・・・Android、iOS、パソコンで使用できるモバイルブログアプリ。
- SteepShot・・・分散型のInstagram系アプリ。
- DSound・・・音楽を共有して、STEEMで報酬を受け取れる、SoundCloudに似たプラットフォーム。
- Zappl・・・ブログとTwitterを掛け合わせたような仮想通貨アプリ。
- Utopian.io・・・オープンソースプロジェクトを介して報酬を分配するプラットフォーム。
- DMania・・・人気エンターテインメントアカウント「9GAG」の分散型とも言うべきアプリ。
- Busy.org・・・機能豊富なインターフェースを持つソーシャルネットワーク。
- Steem Monsters・・・デジタルのトレーディングカードゲーム。
- Actifit・・・運動に対して報酬を提供するフィットネストラッカー。
Steemプロジェクトの一覧は、こちらで確認できます。
スチーム(STEEM)の購入方法
Steemは、ネットワークに参加して投稿、コメント、投票することで簡単に入手できます。また、仮想通貨取引所を介して他のトークンと交換することもできます。
現在、STEEMが上場している取引所を一覧にしてまとめました。
- Bithumb
- Binance
- Bittrex
- Upbit
- HitBTC
- Huobi
- Poloniex
- Vebitcoin
- GOPAX
- RuDEX
- OpenLedger DEX
また、スチームドル(SBD)の上場先は以下のとおりです。
- Upbit
- Bittrex
- HitBTC
- GOPAX
- Poloniex
- OpenLedger DEX
STEEMとSBDの保管方法
STEEMやSBDを安全に保管するには、信頼できる仮想通貨ウォレットを利用します。Steemプラットフォームにはデフォルトでウォレットが付随しており、外部ウォレットを接続することも可能です。
スチーム(STEEM)の将来性・問題点
スチームは、SNSをテーマにした未来志向のブロックチェーンです。検閲なしのアプリ運営を掲げており、広告の代わりにトークン還元という仕組みを採用しています。これにより、クリエイターは簡単にコンテンツを収益化できるのが売りです。
最近では、ハードフォーク20と呼ばれるソフトウェアアップグレードも実装されました。スマートメディアトークンと呼ばれる仕組みを導入することで、手数料なしの高速ネットワーク上で開発者自らがトークンを発行できるようになります。
投票ボットに対する批判
一方、投票ボットに対する批判も噴出しています。投票ボットはプログラムによるスチームアカウントで、SPが高いために半独占的なコンテンツ共有能力を有しています。
投票ボットはスチームの公平性を損なうものとみなされており、ボット以外のアカウントによる投稿が注目されなくなるという問題があります。ユーザーは有料オプションを使用してしかコンテンツを拡散できなくなるため、事態解決が待ち望まれてきました。
こうしたことにも関わらず、投票ボットは依然としてSteemネットワークの主要機能のひとつとなっています。